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大腿骨頭辷り症

大腿骨頭辷り(すべり)症

大腿骨頭辷り(すべり)症は、成長期の大腿骨頭にある骨端線(成長軟骨板)で骨端部がずれる、大変まれな疾患です。 10歳から14歳くらいまでの男児に多く見られます。太ったこどもや甲状腺疾患などのこどもに好発することから、ホルモンの異常との関係が原因として考えられていますが、詳細は不明です。 通常、股関節痛や跛行で発症します。診断は単純X線像(レントゲン)で容易にわかりますが、時に他院にて前後像の1方向だけの撮影を受けて、診断を見逃されてしまう事例が多くありますので注意が必要です。後方への辷り(ずれ)がおこることが多いので、側面像を撮ると明らかなのですが、前後像では辷りがわかりにくいことがあるのです。

治療は手術療法です。骨端部がずれないようにスクリューを刺入しますが、これは意外と簡単ではありません。骨折の手術と同じように考えて、小児整形外科を専門にしていない医師が不用意に手を出してしまい、スクリューがしっかりと骨端部を捉えておらず、固定が不十分であったり、スクリューの先端が関節面を穿破したりして、重篤な合併症を起こすことが多いのです。

私は小児整形外科を専門にしていますが(いや、専門にしているからこそ)、程度の強い、合併症のリスクが高いと考えられる辷り症に対しては、小児整形外科医の中でも特に辷り症を専門にしている医師に紹介することもあるくらいです。 大腿骨頭辷り症の合併症は、骨頭壊死(骨頭部の骨が腐ってしまい、つぶれてくる)や軟骨融解(chondrolysis)(関節軟骨が破壊されてしまう)など、重篤なものが多いのが本疾患の特徴ですので、必ず小児整形外科専門医を受診して頂きたい疾患です。