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屈筋腱損傷

屈筋腱損傷

手イラスト

私たち人間の手は、精密な構造をしており、運動器の中で最も人間的であるといえます。精密な動きをするからこそ、手の外傷は要注意です。その中でも手指の屈筋腱損傷はその損傷部位によって手の機能に致命的なダメージを与えます。

母指(親指)には1本(長母指屈筋腱)の、そのほかの指には2本の屈筋腱があります。PIP関節(いわゆる第2関節)の屈曲に関する浅指屈筋腱とDIP関節(いわゆる第1関節)まで屈曲させる深指屈筋腱です。この2本の腱が並んで存在するPIP関節から手掌の中央のしわまでの間(Zone II)の損傷の場合、治療に際して注意が必要です。 この部分は、術後癒着を起こすことが多く、腱を繋いでも指が動かないということが多く見られました。腱や腱鞘に対する愛護的な操作が必要です。腱損傷や傷が治るということはそこで癒着が起こるということです。問題は、縫合をした部分だけに癒着が起こるのではなく、周辺の組織と癒着が起こることです。縫合した部分が完全に治るには3週から5週かかります。その間固定が必要ですが、手指を動かせなくするので、元のように動くにはしばらく時間がかかります。早く運動を開始すれば癒着も少なく手指の動きも早期からよくなりますが、再断裂の危険性があります。しっかりと縫合して早く動かすという、術後早期運動療法が多くの施設でなされていますが、常にこの再断裂の危険性が伴います。熟練した医師や作業療法士の監視の下に慎重にリハビリテーションをしなければなりません。

しかし、小児の場合にはこのような訳には行きません。私たちは、成人に対しても小児に対しても屈筋腱縫合術後、ギプス固定を3週間行っています。一定の固定期間を設ける場合には、再断裂の危険性は少なくなりますが、癒着や関節拘縮の問題があります。 また、腱周囲に不必要な癒着を起こさないよう慎重な腱の取り扱いが求められます。 ギプス除去後は、夜間の装具やリハビリテーションが必要です。

最も容易に縫合が出来るのは外傷直後です。傷は開いており、腱も切れた部位に近いところにあります。手の外科専門医ではなくても、愛護的に手術が行える外科医であれば縫合は容易です。神経や血管が切れていても顕微鏡下に縫合可能です。  怪我をしてから時間が経つと、腱の中枢部は筋肉に牽引されて、引っ込んでいきます。 外傷後、1カ月以内であれば、端々縫合(腱の切れた同士を合わせること)が可能ですが、2カ月、3カ月経つと端々縫合は不可能になります。また、腱の通り道である腱鞘も細くなったり、癒着を起こしたり腱周囲の条件も悪くなります。

この場合には、手術を2回に分けて行います(two stage tenoplasty)。 この時期には創は治癒していますので、皮膚切開を手指掌側にジグザグに加えます。 直線的な皮膚切開は、その後の拘縮の原因となります。特に小児においては注意すべき点です。断裂した腱の確認を行い、痛んだ腱鞘を切除し、シリコンで出来た人工腱を、指尖から手掌まで挿入します。 また、神経損傷があれば同時に縫合します。 2カ月から3カ月後人工腱と移植用の腱(大抵は長掌筋腱を使用します)を入れ替える手術を行います。このあとは、端々縫合と同じ手順で固定後、リハビリテーションを行います。小児の場合には、人工腱を入れることなく、初回に腱移植が行われてきましたが、私たちはこの2段階に分けて行う方法で良好な成績を残しています。

治療成績は端々縫合が優ります。外傷後2週間以内であれば問題なく端々縫合が可能です。怪我をしたときに、スタッフの関係でかかった病院で腱縫合が出来ないようであれば、また、週末や年末年始など長期休業の場合には、とりあえず止血のために、皮膚のみ縫合してもらうのがよいでしょう。 その後、手術が可能な施設で治療を行うのがよいでしょう。外来処置室などで不適切な治療がなされないよう私たちも願っています。