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先天性内反足

先天性内反足

先天性内反足は生まれつき足の形の変形が明らかですので、通常は生まれた直後に診断されます。 発生頻度は0.1%以下といわれていますので、1000出生に1人以下の稀な疾患といえるでしょう。 内反足には足の変形以外に異常がない狭義の内反足と、神経疾患や骨系統疾患などの疾患の一徴候としておこる症候性の内反足に大きく分れます。一般的に症候性内反足は難治例が多く、治療にたいする考え方が異なりますので、ここでは狭義の先天性内反足を中心に述べたいと思います。

内反足の病態

内反足変形は足が内向きに捻れるように変形しており、外観からもはっきりわかる変形です。 内反足と間違いやすいものに内反位足というものがあります。 内反足との決定的な違いは、変形が固定したものかどうかです。 つまり、内反位足では徒手的に簡単に正常の足の形に戻すことができるのです。 内反位足は子宮内で足部が内反位にあったために内側に向く癖がついていただけで、生後足を動かしていく間に自然に治っていくもので、疾患と言えるほどのものですらありません。つまり小児整形外科的専門的治療が必須な内反足とは決定的に異なるものなのです。

内反足の変形は通常、4つの変形の組み合わせにより起っています。 すなわち、内反、内転、凹足、尖足です。 内転のみが認められ、それ以外の変形が全く認められない足も時々あります。これも足が内向いているため内反足と間違われることがありますが、内転足と呼ばれる全く別の疾患です。 内反足の場合、通常は距骨の周囲の骨の配列の異常が見られます。踵骨は距骨にたいし、rolling in といって、内側に回り込むような位置になります。舟状骨は距骨にたいし内側に転位し、それにより前足部全体が内転位になります。また第一中足骨は底屈し、いわゆる凹足変形となります。 また、内反足に伴い、下腿の骨が内捻(内側に捻れて、内また歩行になる)していることがあります。 デニスブラウン装具などで矯正されることもありますが、5-6歳になっても矯正されない場合、下腿骨の回旋矯正手術を行なうことがあります。わたしたちはイリザロフ法による矯正でよい成績をおさめています。

内反足治療についての基本的な考え方

内反足は外表から明らかにわかる疾患ですので、生後すぐに診断されることがほとんどです。一般的にはなるべく早く治療を始めるべきとされており、わたしたちもその意見に必ずしも反対ではありません。 しかし、いろいろな事情で出生直後に治療を開始することができないこともあるでしょう。そのような場合でも、なにを差し置いてでも治療を開始しなければならないのでしょうか。 答えはNOです。

内反足は小児整形外科疾患の中でも特に専門性の高い疾患であり、この疾患に経験のある小児整形外科医師により初期治療がなされた場合と、そうでない場合とでは結果に大きな差が生じます。わたしは前任の滋賀県立小児保健医療センターで中途半端な初期治療により、後で取り返しのつかない変形を起こしてしまった症例をたくさん経験してきました。不適切な初期治療や、中途半端な手術は取り返しのつかない結果を生じます。

一方、諸事情により早期に治療を受ける機会がなかった未治療の例は、かえって最終成績は比較的良いのです。従って、決してあわてることなく、最初から正しい診断、および治療をうけることが最も重要であると思います。出生直後の赤ちゃんにとって最も重要なのは両親とのふれ合いです。

内反足のギプス治療

内反足を持って生まれた赤ちゃんに対してまず行なうことは、他の合併奇形の検索、変形の評価、そして治療法や予後についての御家族への説明です。 その後、徒手による矯正、およびギプス治療がスタートします。 この段階が内反足治療で最も重要であり、ここで予後が決定すると言っても過言ではないと思います。 この段階で誤った矯正法や不適切なギプス固定を受け、非常に治療困難な高度変形の残存した足になってしまった後でわたしのもとを訪れた不幸な例を多く経験してきて、この段階の重要性を再認識しました。

わたしは基本的にはPonseti法という方法に従って治療を行なっています。 Ponseti先生は従来の手術療法に対する反省から、徒手矯正・ギプス固定を繰り返しながら、尖足以外のすべての変形を矯正し、尖足はアキレス腱の皮下切腱術を行い、ギプス固定の後、外転バーのついた装具(デニスブラウン装具)を装着するという方法ですばらしい成績をおさめております。この方法は近年、地元のアメリカのみならず、全世界に普及しつつあるようです。実はわが国にも内反足の保存的治療においてすばらしい貢献をされた月出(ひたち)先生という先生がいらっしゃいます。わたしは月出先生の赤ちゃんを泣かさない愛護的な手技に大変感銘を受け、月出先生のテイストを加味した私流の矯正手技を行なっております。

さて、一言でギプス固定といっても、赤ちゃんの小さくしかも変形した足に対して愛護的に、しかもずれたりしないように正しくギプス固定することは必ずしも容易ではありません。いくら素晴らしい矯正マッサージを行なっても、固定が不適切であれば結果は満足するものではないばかりか、皮膚の損傷や、尖足のさらなる悪化、拘縮の増強など多くの不具合が生じる可能性があります。わたしたちはギプスの装着から除去に至るまで独自のこだわりを持って治療しております。

われわれが巻いた内反足ギプス
われわれが巻いた内反足ギプス
他の病院で小児整形外科専門でない医師が巻いたギプス
他の病院で小児整形外科専門でない医師が巻いたギプス

内反足の装具治療

装具は矯正が終わった足を正しい位置に保持し、再発を予防する上で大変重要です。わたしたちは主として外転バーで両足を連結するデニスブラウンタイプの装具を使用しています。 この装具の利点は装具装着中も足首の関節(足関節)を動かすことができること、それに両足ともしっかりと外転の位置を保つことができることです。実際、この装具を使うようになってから、下腿の内捻(内側への捻れ)による内旋歩行が残ることが少なくなりました。 ただ、両足を固定されますので、寝返りがしにくく、慣れるまでは装着が困難な場合があります。(4-5か月くらいまでの赤ちゃんならあまり問題はないのですが、月齢が高くなるにつれ、装着は困難になる傾向にあります)

わたしたちは装具にも独自のこだわりがあります。素材を厳選したデニスブラウン装具(滋賀の坂本ブレース特製)を、ひとりひとりの足の形に合わせてオートクチュール感覚で製作致します。 最初、入浴時以外は装具を装着しなければなりませんが、3か月くらいで夜寝る時のみの装着となります。 夜間の装着は長期に及びます。約2年くらいがひとつの目安です。その間、成長に伴い、何度かの装具の作り替えを行なう必要があります。

デニスブラウン装具

内反足の手術療法

以上述べてきましたように内反足は早期から正しく治療を行なえばかなり変形は矯正されますが、尖足だけは徒手的な矯正だけでは治療が難しく、9割くらいの症例でアキレス腱延長術(後方解離術)が必要となります。アキレス腱延長術(後方解離術)は手術時間30分くらいの簡単な手術で、術後関節が硬くなったりするような後遺症もほとんどありません。従ってこの手術だけで大丈夫な症例はとても予後の良い内反足なのです。 稀に非常に徒手矯正が困難で、後方の手術だけでは矯正が不可能な症例があります。このような場合、距骨下全周解離術あるいは後内方解離術という大きな手術が必要となります。この手術は3時間くらいの手術で、傷も大きく、術後少し関節の動きが悪くなります。しかし、適切な時期に正しく行なえば、スポーツなども問題なく行なえるくらいの良好な足にすることができます。 もっとも厄介なのが、不適切な初期治療で変形が残存した状態で大変硬くなってしまった足や、不適切な初回手術のため再手術をしなければならない例です。手術をしなければ日常生活にも支障をきたしますので手術をせざるを得ない場合が多いのですが、どうしても成績は劣ります。 手術は必要最小限にしたいというのが内反足治療におけるわたしたちの基本的方針です。わたしたちは少しでも可能性があれば手術の決定をする前にもう一度正しい徒手矯正・ギプス固定をトライしてみる御提案を致します。それで手術が回避される、あるいはより侵襲の小さな手術になる症例があるのです。

症候性内反足

全身性の疾患の部分症状としてみられる内反足は症候性内反足と呼ばれています。 二分脊椎、関節拘縮症、さまざまな骨系統疾患に伴う内反足は通常の内反足に比較して一般に難治性です。 このような内反足は上で述べたような原則はあてはまらないことが多く、個々の状態に応じて治療法をカスタマイズする必要性があります。 たとえば二分脊椎に伴う内反足ですと、通常の内反足と同じようにギプスの矯正にこだわりすぎると、知覚がないために皮膚のトラブルをおこすことがあり、注意が必要です。すなわち、足だけにとらわれずに、その疾患の全体像、さらにはそのこどもの発達を含めた全人的な治療を行なう必要があるわけです。 小児整形外科の最も難しいのはこのような判断なのです。