小児の外傷
発育途上の小児の骨格はおとなにはない独特の構造と特性が備わっています。 従って小児期の骨格に対する外傷を扱う上でおとなと同じように考えると手痛いしっぺ返しを食うことがあります。 ここでは小児特有のいくつかの外傷についてお話をします。
肘内障
幼児期の上肢の外傷の中でもよく見られるものの1つに肘内障があります。 誰かがこどもの手を強く引っ張ったり、遊んでいるうちに肘がからだの下敷きになって起こることが多いようです。 原因は肘のあたりにあります。橈骨の頸部は輪状靭帯という靱帯で首輪を巻かれたようにして支えられていますが、幼児期は橈骨頭の形が平坦なため首輪がするりと抜けそうになることがあるのです。 受傷直後からまるで上肢全体が麻痺を起こしたかのように、患側は肩・肘・手のすべてを動かそうとしません。激しく痛がりますが、その痛みの部位もはっきりとはしませんが、手のあたりを痛がることが多いです。そのため痛みの原因がどこにあるのかわからず、親は大変動揺します。救急疾患の専門家の救急隊ですら、「こどもが肩を脱臼したようです」という報告をして搬送してくることがあるくらいです。(実は幼児で肩関節の脱臼は極めて稀です) 診断は受傷の様子を詳しく聴取し、上肢の動かし方や腫れの有無(肘内障では腫れません)などを注意深く観察すれば極めて容易です。通常X線検査も不要ですが、時に鎖骨や肘関節周囲、あるいは手関節周囲の骨折を疑わなければならない場合もありますので、このような場合にはX線検査を行い、骨折を見逃さないようにしなければなりません。 診断が確定すれば治療は容易です。受傷後早期であれば麻酔なしで徒手的に整復が可能で、しかも整復操作直後にまったく問題なく上肢を動かすようになります。時に、受傷後かなり時間が経ってから(場合によっては翌日など)来院されることがありますが、このような場合、整復されてもこどもはしばらく上肢を動かしてくれないことが多く、厳重に経過観察します。 肘内障を何度か繰り返し起こすこどももいますが、通常年齢が高くなり橈骨頭がしっかり発育するにつれて肘内障を起こさなくなります。
上腕骨顆上骨折
小児の上肢の骨折で最もよく見られる骨折に上腕骨顆上骨折があります。小児が転倒あるいは転落をして肘を伸ばした状態で手を突いて受傷することが多いです。わたしはこの骨折について『整形外科看護』という医学雑誌の第11巻3号(2006年3月25日発行)に詳しい解説を掲載しましたので、その全文を御紹介します。
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